フローの意味:集中できる!没入状態を作る9つの条件

 

突然ですが、『もっとも何かに集中している瞬間』って、何をしている時ですか?

 

このページで紹介する、『フロー理論』『フロー体験』は、ひとが最も何かに集中していた時のことについて、研究をしているチクセント・ミハイ(mihaly csikszentmihalyi)というハンガリー生まれの心理学者の提唱した『フロー』について、解説します!

※ちなみに、ミハイさんは、心理学者のユングの講演を直接聞いたという逸話や、ピータードラッカーに創造性に関するインタビューを申し込んだ(が、ドラッカー氏が忙しく、敬意を持って断られた)という逸話が残っています。
ドラッカーが「幸福と達成の心理学の基本書である」と賛辞を送ったのが、この『フロー理論・フロー体験』についての著作です。

 

ノラ子ノラ子

『フロー』って、「集中している状態」のことニャの??

『フロー状態』は、普通の生活の中での、ちょっとした集中(例えばテレビや映画を見ていて、時を忘れるほど、見入ってしまった!などなど)よりも、もっと、積極的な意味を持っています。

 

映画やテレビを観るのは、時間つぶしとして見ている場合は、受け身的な行為です。

ミハイ先生が言っているのは、もっと積極的に、『私が何かに取り組んでいるという状況』の中での、「没入感(ぼつにゅうかん)」のことを指しています。

ノラ子

一言で言えば、『ハマっている』ってことニャのかな??

時間を忘れるほど何かに『ハマっている・無心になっている』という状態のことだと、考えて問題ないと思います。

 

では、このように、自発的に時を忘れるほど、何かに集中するためには、どうすれば良いでしょうか?

もし、そんな方法があったら知りたいと思いませんか?

 

ミハイ先生は、『フロー状態』になるための方法について、7つの特徴として、まとめてくれています。

ミハイ・チクセント
ミハイは問いかけます「人生を生きるに値するものにするものは何でしょう」お金では幸せになれないと気付いた彼は、「フロー」の状態をもたらす活動の中から喜びと永続的な満足を見出している人たちを研究しました。

<出典:TED ミハイ・チクセント:フローについて>

クマ五郎クマ五郎

ちょっとショーンコネリーに似ているね。。

 

上記の動画と、ミハイ先生の代表的な著書『フロー体験 喜びの現象学』に書かれている、「フロー状態の特徴」について、見ていきましょう!

「フロー状態」の意味と特徴

【フロー状態の意味】

人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。 ゾーン、ピークエクスペリエンス、無我の境地、忘我状態とも呼ばれる。

心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱され、その概念は、あらゆる分野に渡って広く論及されている。

<出典:フロー (心理学)wikipedia

フローとは、とても何かに集中している状態、しかも、それが、客観的にも上手くいっていて、成功している状態のことです。

独りよがりに、なにか自分勝手な活動をしていることは、おそらくフローとは呼ばれません。
(例:街宣活動で、他人に迷惑をかけている状態、ヤジを飛ばして本人だけが満足している状態 など)

『フロー体験 喜びの現象学』の中でも、フローの定義についての条件で、面白いのは、「自己目的的」と言う部分です。

究極、非常な集中状態であれば、すべてフローだと言えるのだとしたら、自分勝手な子供じみた行為も全てがフローだと呼ばれかねません。

この本では、「自己目的的」(:放っておいても、何かを追求している状態)であることを重視しています。

 

チクセントミハイにとってのフローの意味って??

 

ミハイ先生の定義では、株取引であっても、その目的によってフローである場合があり得る、ということが書かれています。

儲けるために株の売買をすることは、自己目的な経験とはならないが、
将来の動向を予見する能力を証明するためにする売買は、
ーーー結果として、手に入るドルやセントがまったく同一だとしても、
自己目的的な経験となる。

子供を良き市民に仕立てるための教育は自己目的的ではないが、
子供たちとの相互作用を楽しむための指導は自己目的的である。

(p83ページ)

ここで言っているのは、金儲け(もしくは子供を親の道具のようにするような)目的ありきの態度・外発的な報酬を目的とした行動は、フローの研究の対象としていない、ということが書かれています。
※「外発的な報酬」:外側から与えられた報酬
 「内発的な報酬」:内側から沸き起こる報酬

「外側からやらされてる状態・目的ありきの態度」は、ミハイ先生が本当に研究したい状態ではないことが分かります。

 

【フロー状態の特徴】

  • 取り組んでいる際に、常に明確な目標がある
  • すぐにフィードバックが得られる
  • 「取り組んでいること」と「今の自分の能力」が釣り合っている
  • 「行動」と「意識」が融合している
  • 気を散るようなものが、一切ない
  • 失敗の不安がない
  • 自意識が消えるほどの集中
  • 時間の感覚が歪む(または無くなる)
  • 活動が自己目的的になる

 

これまで、何かに集中できていたことを思い出すと、上記のような特徴があった!と思える項目もあるのではないでしょうか?

この内容は、逆転の発想で、『「フロー状態の特徴」を用意することで、フロー状態になれるのでは??』という仮説が、成り立つようにも思えます。

『明確な目標を持ち、フィードバックを得ながら、適切な課題に取り組み、極力、集中できる環境を用意する』

というのは、どうでしょう??

 

 

そんなことを言っても、『フロー状態の人なんか、身近に、全然いないよ!』という声も聞こえてきそうですが、優れたスポーツ選手は、この『フロー状態』の中にあると言えそうです。

イチロー選手が、打席に立つときの無心さは、他の選手よりもさらに高い集中度と、明確な目的意識とが絶妙に、調和しているように見えます。

この本で、他に取り上げられているのは、

  • 脳外科医の完璧に制御された手さばきと目的意識
  • 音楽家が、時を忘れるほど演奏に集中している状態
  • 深夜に学校に通いながら、工場のベルトコンベアーの仕事の効率化を、自ら取り組んでいる青年の話

など、専門性を持った医師・音楽家・スポーツ選手以外に、一般のこれから何かを獲得しようとしている一般の人々をも対象としています。

「フロー状態」が生み出されるための4つの条件

1.自分の能力に対して適切な難易度のものに取り組んでいる
2.対象への自己統制感がある
3.直接的なフィードバックがある
4.集中を妨げる外乱がシャットアウトされている

※p95より意訳

 

『フロー状態』になるには、どんな点に気を付けると良いか?ミハイ先生が教えてくれているので、9つのポイントに分けて、解説します!

フロー状態(没入状態)を作るための9つのポイント

1.自分を変えようとせず、取り組む姿勢を変える

本書には、どうすれば自分を変えられるかということよりも、自分の生活を変えるために何ができるかについて書かれている。

楽しさは何をするかによるのではなく、むしろどのようにするのか?によって決まるのである。(p125)

(※以下、傍点は引用者)

ミハイ先生は、フロー状態に入ることが出来ている人をたくさんのサンプルとして、客観的な調査をしています。

「フロー状態になるためには、どうすれば良いか?」の前に、「すでにフロー状態で活動できている人に対して、どんな特徴があるのか?」を観察する、というアプローチを取っています。

そこで言われていることは、『今の自分から出発して、何が出来るか?』を考える、ということです。

やってしまいがちなこととして、今の自分を変えたい!と思って、直近で効果がありそうなことに、飛びついてしまいがちですよね。

今すぐ自分を変えたい!という気持ちをグッとこらえて、『出来ることに焦点を当てる』ことが、ポジティブ心理学の軸となっている考え方です。

 

2.忘我の状態を作り出す工夫を!人と比べない!

フローを生み出すどの体験も、楽しめるようになる前に、最初に注意力の投資が必要である。(p94)

フロー状態・集中状態を作り出すために、どんなことをしたら良いか?を考える際に、『取り組む態度や目的意識』が重要です。

何に注意力を向けるのか?それが私にとってどうして重要なのか?が分かっていると、自然とそのことに注意を向けることができ、しかも、そのことを楽しめるようになる、と書かれています。

同時に、「他人と比べる」ことが目的になってしまっては、本質的に物事に集中したり、楽しめたりする状況から、目的が入れ替わってしまいます。

決して自分勝手で良い、という意味では無く、「他人と比べる」のではなく「自分がすべきことに集中する」という状況を作り出すことが大切です。

 

3.テレビより本を読もう!

ドイツでの大規模な調査では…最も多くのフロー体験は、多くの本を読みほとんどテレビを見ない人によって報告された。

最も少ないフローを報告したのは、めったに本を読まず、よくテレビを見る人だった。(p96)

これも客観的な調査によって明らかになった報告です。

調査結果としては、「多く本を読み、テレビを見ない人」に多くフロー体験をしている人がいた、という内容です。

テレビを悪者扱いしているようにも聞こえるかもしれませんが、おそらく、ここで言いたかった点は、『自分の頭で考える』『自分の価値観をしっかり持っているべき』ということが言いたかったのではないか?と思うのですが、どうでしょうか。

 

4.友情を大切に。1人になりすぎは良くない!

人々が報告する最もポジティブな体験は、ふつう、友人と一緒にいる経験である。(p114)

フロー状態というと、極度の集中を、他人との関わりを断って、1人だけでするというイメージを持ちがちですが、この本では、「友情も大切だよ!」ということが語られています。

ポジティブな状態と、フロー状態の研究の書なので、フロー状態を生み出すためにも、適度なポジティブさ、日常の中のリラックスした状態も、集中した状態を生み出すために、良い効果を生み出すことが期待できます。

 

 

5.物質的豊かさよりも、幸福感/発見の感覚を重視する!

アメリカの平均収入が1960年代と1990年代とでは、実質的に倍以上にもなったにもかかわらず、大変幸福だと言う人々の割合は同じ30パーセントのままだった。(p28)

すべてのフロー活動には次のような共通点があることが我々の研究で明らかになった。それは発見の感覚、人を新しい現実へと移行させる創造的感情である。(p94)

そもそも、ミハイ先生は、戦時中のハンガリーで、荒廃してやる気をなくしている大人達の姿を見て、「何が人生を生きるに価するものとするか」と疑問をもったということが、TEDのYoutubeにて語られています。

心理学の中でも、ポジティブな面に光を当てて、人がイキイキと活動することに対する問題意識が強かったことが、うかがえます。

そんなミハイ先生が、注目しているのは、経済的な豊かさが、幸福だと思う実感に、影響するか?という点です。

決して、一概には言えませんが、ある一定の水準以上の経済的な豊かさは、人の幸福感に比例することは無い、という例だと言えます。

 

多くお金を得ること(または支払うこと)よりも、『自身の幸福感(幸福だと言う自身の実感)を手に入れる』ことや、幸福感を持てるような考え方を重視したのが、「ポジティブ心理学」という学問です。

 

6.現在置かれている状況・環境に寄らず、フロー体験は可能!

彼らの中には、自分の身に起こった惨事を驚くほど受け入れ、障害のおかげでむしろ人生がよりよいものになったと言う人がいるのである。こうした人々の特徴は、心理的エネルギーをかつてないような形で訓練することで、自身の限界を超えることを決意していたという点である。

彼らは、服を着る、自宅の周りを散歩する、車の運転をするといった最も単純なスキルからフローを引き出せるようになった。…そのような環境で生き残る人々は、外的環境を選択的に無視し、彼らだけの現実である内的世界に自身の注意を向け直すことができる。(p184)

『現在置かれている環境に寄らず、フロー体験は可能だよ!』と、ミハイ先生は言っています。

現在、苦境に立たされているとしても、『現在の私に、なにができるか?』に焦点をあてるのが、ポジティブ心理学の基本的な考え方です。

自分にできることに、焦点をあてることは難しいことではありますが、自然と自分がイキイキとした状態を見つけ出せる状況を引き出すことは、出来るかも知れません。

 

7.良かったことを見つめる

ESM研究によれば、自分自身について考える時、気分はたいていネガティブである。

…この悪循環を打破する一つの方法は、よかったと感じる理由のある時や、人生が上昇の傾向にある時を振り返るように、内省の習慣を発展させることである。(p195)

さまざまな経験に意味を組み込むことに成功した人々が共有している戦略…とは、過去の世代が達成した秩序から、心の無秩序を回避させる模範を引き出すことである。

『良いこと・良かったことに焦点を当てることが重要だよ!』ということが語られています。

そのこと自体を習慣化して、さらに発展させることの重要性が書かれています。

 

8.好きで、かつ、本質的に意味のある活動に取り組む

​仕事の量だけで無く、質にも問題がある。(略)

磨き立てられた病院で手術をしている脳外科医も、重い荷を背負って、ぬかるみをよろめき歩く奴隷労働者も、ともに働いている。

しかし、外科医は自分が日々新たに学ぶ機会をもっており、秩序ある状態にあり、困難な仕事を遂行できることを知っている。
労働者はひどく疲れる動きの反復を強いられ、彼が学ぶもののほとんどは自分の無力さである。(p179)

「好きなこと・自分が意味があると考えていること」に取り組むことで、その仕事を常に新しいチャンスだという態度を獲得できる、とミハイ先生は語っています。

現在の仕事を、『労働者として働かされていると考えるのか?』、それとも『困難な仕事だけれど、何か意味がある仕事だと考えているか?』によって、仕事の取り組み方や成果に大きな影響を与えるという意味だと解釈できます。

 

9.自分にとっての価値観に従い、楽しめることに焦点を当てる!

フローモデルの処方に従えば、理論的にはどのような仕事もより楽しくなるように変えることができよう。
しかし現在のところ、その仕事の性質を左右する権能をもつ人々の、仕事が楽しいかどうかについての関心はきわめて低い。

経営ではまず生産性を最優先に考えなければならず、組合の指導者は安全や保障の維持を最優先に心掛けねばならない。短期的にはこれらの優先事項は、フローを生み出す条件との著しい不一致を生むだろう。これは残念なことである。

なぜなら、もし仕事をする人が真に仕事を楽しむならば、仕事は労働者個人を利するだけでなく、遅かれ早かれ、彼らはより効率的に生産し、現在予定されている以上の目標をも達成することは、ほぼ確実だからである。(p192)

フロー理論では、『楽しむ』という言葉がよく出てきます。

一方、現在の経済や経営に対する、懐疑的な見解が多いことが特徴的です。ミハイ先生が、「残念だ!」と言っているのは、直近の生産性・安全や保障の維持を最優先するという組織側の姿勢についてです。

反対に、とても評価しているのは、個人が主体的に、≪何かを好きで仕事をするという態度≫について、とても評価しています。

さらに、その考え方を拡げて、「もし仕事をする人が真に仕事を楽しむならば、(略) 現在、予定されている以上の目標をも達成する」と断言しているところが、ミハイ先生ならではの卓見です。

 

とはいえ、好きで仕事が出来ている・仕事を楽しめているという人は、かなり少ないのではないでしょうか??
「それができるなら、初めからその仕事を選んでいるよ!」という声も多いかもしれませんね。

しかし、それは態度によって、これから変えることができる可能性があります。
このあたりは、日本の心理学者 河合隼雄さんが語られたことが、参考になると思います。

上記のフローモデルについて触れつつ、また別の記事で、書いてみたいと思います。

 

 

ミハイ先生が提唱した『フロー』の意味とは?

 

  • 没入状態のこと
  • ただの集中ではなく、自発的に取り組んでいるということが重要!
  • ミハイ先生は、フロー状態になるための方法も研究していた。ポジティブ心理学の創始者の一人。
  • まだ未開拓な分野なので、「脳科学」や「認知科学」などとの横断的な研究に期待大!

 

 

 

フロー状態の意味と、そのためにできることについて、まとめてみました。

 

普段の仕事や、生活の中でも取り入れられる部分があるのではないでしょうか?

「ポジティブ心理学」について興味があるならば、ポジティブサイコロジースクールの書評などは、とても参考になると思います。また、TEDのYoutube動画も、ミハイ先生や、マーティンセリグマンさんの講演を無料で見ることが出来て、結構感動的です。

 

マーティン・セリグマンが心理学(学問としての、患者とセラピストの1対1の関係においての)について話します。病気を越えたことに注目が移ってきた今、現代の心理学は私たちにどのように役立つのでしょうか?

<出典:TED マーティン・セリグマンのポジティブ心理学>

ぜひ参考にされてください。